大津市立長等小学校 鈴木校長先生 インタビュー

伝統芸能を学び、心を育てる。風光明媚な街にある「長等小学校」の魅力とは。

長等山と琵琶湖に挟まれた大津市中心部。目の前には1000年以上の歴史を誇る「三井寺」があり、歴史と伝統を感じる街並みが広がっている。そんな街で140年以上の歴史を持つのがこの「大津市立長等小学校」。6年生になると全員で狂言「附子(ぶす)」を本格様式で演じることが度々話題にもなる同校であるが、その歴史的資産を生かした学校独自の教育観とはどのようなものだろうか。今回は同校の校長である鈴木靖彦先生にお話を伺った。

歴史と自然の恵みにあふれるロケーション

今回取材にご協力頂いた鈴木校長先生
今回取材にご協力頂いた鈴木校長先生

――まずは学校の沿革と概要を教えてください。

鈴木先生:1873(明治6)年に創立し、現在140年以上の歴史がある学校です。そして2023年には150周年を迎えます。児童数は630人で、1学年で3~4クラスあり、支援学級も含めて全26クラスとなっています。元の校舎はここからほんの少し離れた場所でしたが、1967(昭和42)年に現在の場所に移転しました。

校舎
校舎

――学校の施設や周辺環境に関して教えてください。

鈴木先生:琵琶湖の潤いと歴史的な建造物、文化的遺産がたくさんあることは本当に恵まれていると思います。運動場の向こうの山には、1000年以上の歴史ある「三井寺(みいでら・天台寺門宗総本山園城寺)」の山門が見え、すぐ隣には琵琶湖疎水が流れています。そして、その近くには観光客も多く訪れる桜の名所があり、本当に風光明媚な場所の中心にある学校だと言えると思います。また、東西に100メートル以上ある長い校舎も本校の特徴です。自由選択ですが、学校には校舎が移転した1967(昭和42)年から50年変わらない標準服と帽子があり、子どもたちも好んで着用しています。地域の方からの評判も良いんですよ。

50年間変わらないという帽子
50年間変わらないという帽子

多くの恵みと伝統から学ぶ、長等イズム!

――学習の特色や教育目標について教えてください。

鈴木先生:教育目標は「心豊かでたくましい子ども」という言葉を掲げています。そして、伝統文化を生かした教育にも特に力を入れています。本校には長い歴史と伝統、そして豊かな自然環境があり、さらに子どもたちを見守ってくださる多くの地域の方々がいてくださっているからこそ、この目標を実践できているのだと日々実感しています。

――“伝統文化を生かした教育”について具体的に教えてください。

鈴木先生:これは本校きっての取り組みとして色んな形で取り上げて頂く機会が多いのですが、6年生になると「大津市伝統芸能会館」で狂言の「附子(ぶす)」の発表会を行います。これは本校に入学してくる1年生もみんな知っていますし、幼稚園の子どもたちも見に来ます。言葉は子ども向けに簡単にしたものではなく、室町時代の狂言をそのままの言葉で演じます。本校に入学したら6年生は全員でこれをやって卒業するという伝統があるのです。”伝統あふれる地域、系統的・断続的な活動をなすことによって学ぶ、地域とともに育てる”。これらの視点から、本校の6年間で学んだ総まとめとしての発表会となっています。

――例えば6年生が発表会で演じるのに先立って下の学年では基礎の勉強を行うのですか。

鈴木先生:その通りです。でもそれは狂言だけに限定したものではなく、例えば5年生だと「大津絵」や「三井寺」について学んだり、4年生では疎水の歴史を学んだりと、狂言の発表会という特別活動に色んな教科の学習を絡めて勉強します。それを経て6年生になるという流れなのです。

学びを深める
学びを深める

――そのような取り組みには地域の方も関わられているのでしょうか。

鈴木先生:現在はお亡くなりになられましたが、「大津絵」の学習では本校出身の大津絵画家である高橋松山(たかはし しょうざん)先生に1977(昭和52)年から来て頂いてご指導を頂いておりました。現在は、5代目の息子さんに引き続いてご指導頂いております。狂言の練習では「大津なごみの会」の皆さんの指導を受けて、文化としての狂言だけではなく、狂言の舞台にふれる人の生き方まで学びます。このような活動の中で、地域の歴史や地域の方々とのふれ合い、守りぬかれてきたものに対しての想いなど、学校のなかだけではできない貴重な体験ができることを大切にしています。

大津絵
大津絵

――子どもたち自身の反応はどうですか?

鈴木先生:子どもたちは6年生で「附子」を演じるということを見据えて、それまでに下地の勉強をしているので、6年生になった時にはこれまでの学習を通してグッと成長した姿に見えます。そして6年生でそれをやり切った時には子どもたち自身もとても自信に満ちていて、達成感も高いのではないでしょうか。

6年生になると「附子」を演じる(提供:長等小学校)
6年生になると「附子」を演じる(提供:長等小学校)

認め合い、分かち合う。学校独自の取り組みとは

――その他に学業に関しての取り組みはありますか。

鈴木先生:学力向上にも取り組んでおりますが、その取り組みの特徴が実は学級会にあるのです。みんなで課題を解決していく“協働的課題解決”の仕組みを授業でも取り入れています。例えば、算数で分からないことがあれば、子どもたちがちゃんと「わからない」と言える空気を作り、それをみんなで一緒に解決できるように考えることを大切にしています。主体的で対話的な深い学びを実践するために、この“協働的課題解決”の仕組みを取り入れています。また、子どもたち自身で街づくりについて考え、それを発表する「街づくり発表会」も行っています。

街づくり発表会の資料作り
街づくり発表会の資料作り

――学年や学校を超えた交流についてはいかがでしょうか。

鈴木先生:学内での縦割り遊び、縦割り運動会応援、縦割り掃除など、ほかの小学校でも行っていることもありますが、本校は日常的に異学年交流の取り組みが多いと思います。例えば、幼稚園の5歳児と小学5年生が一緒にふれ合う「5・5交流」など。また、「三井寺」では地域の方が主催している「寺子屋」を開催しています。「寺子屋」を通して子ども同士で勉強を教え合ったり、地元の中学生に教えてもらったり、それを地域の方がサポートしてくれたりなど、色んな形で交流をしています。小中連携では、子どもたちが呼び名を決めた「OSK(皇子山中学校区・小学生中学生・こども会議)」というものを小中一貫の柱として活動しています。各小学校から「皇子山中学校」に通う子どもたちが特に善悪などの道徳面について共通の認識を持ち、個性の違いを認め合えるようになって、中学校生活を送れるようにする取り組みとなっています。

――本当に色んなことに取り組んでいるのですね。

鈴木先生:このような取り組みは特別活動を重視していることから発展してきたもので、もっと全体的に教科を横断して学校内だけでなく、周辺地域の皆さんまで取り込んだ包括的なものにしていきたいと考えています。そのために学校の取り組みについては、情報公開をして地域の皆さんにも理解してもらい、ご協力頂くサイクルを回していきたいのです。本校の近くにはそういった地域の資源が豊富にありますし、実際にその取り組みを理解して頂いていますので、学校からお願いしなくても地域の皆さんで自主的に運営してくださることがとても多いのです。

校舎からの眺め
校舎からの眺め

――長等小学校をどんな学校にしていきたいですか。今後の展望をお伺いできればと思います。

鈴木先生:今までお話したことのまとめにもなるのですが、本校ではいかに6年生を育てていくか、そこを重視しています。1年生を担当する教師でも「この子どもたちをいかに立派な6年生に育てるか」「下学年の子どもたちに憧れられる6年生になるにはどうしたらよいか」など、子どもたちの将来を見通した教育をこれからも行っていきたいなと考えています。

――学校周辺の街としての魅力や、鈴木校長先生のおすすめスポットを教えてください。

鈴木先生:なんといっても長等の街と言えば「桜」ですね。桜の咲く4月の初めに来ていただくと素晴らしい景色が見られると思います。そのなかでも「三井寺」の桜は特におすすめです。周りには美味しいお店もたくさんありますので、そういうお店にも寄りながら綺麗な桜を楽しんで頂きたいと思います。

長等の街といえば「桜」
長等の街といえば「桜」

校長 鈴木靖彦先生
校長 鈴木靖彦先生

大津市立長等小学校

校長 鈴木靖彦先生
所在地 :滋賀県大津市大門通5-1
電話番号:077-522-6669
URL:http://www.otsu.ed.jp/nagara/
※この情報は2019(平成31)年3月時点のものです。