大津市立平野小学校 小林校長先生 インタビュー

児童主導の取り組みを支え、 将来活躍できる子どもたちを育てる「大津市立平野小学校」

太陽の光を浴び、キラキラ輝く校舎から今日もたくさんの児童の声が聞こえる。JR琵琶湖線・京阪石山坂本線「膳所」駅を中心として南北に長い学区を持つ「大津市立平野小学校」は少子高齢化の昨今において、いまだ児童数1000人以上を誇る大規模校だ。そんな平野小学校で2017(平成29)年4月から校長を務められているのは小林典也先生。児童数が多いからこそ、児童1人1人の個性を尊重する教育を心がけていると語る。小林校長先生は30年近く教員を務めた後、大津市教育委員会に配属され、昨年再び教員として本校にやってきた。「校長になったのは本校が初めてで、赴任当初は子どもたちの声が聞こえる場所に戻って来られたという喜びと、大規模校の校長を務めるという責任の重さを感じました。」と語る。今回はそんな小林先生に平野小学校の特色と地域の魅力についてお話を伺った。

今回取材にご協力頂いた小林典也校長先生
今回取材にご協力頂いた小林典也校長先生

――まず、学校の沿革と概要について教えてください。

小林校長先生:本校は今年で142年目を迎える歴史の古い小学校です。学制発布の4年後、1876(明治9)年に本校の前身となる「松本学校」と「峻明学校」が設立され、やがて2つの学校は統合し、「大津東尋常小学校」、「平野国民学校」と名前を変え、1947(昭和22)年に「平野小学校」という名称になりました。1970年代後半から琵琶湖の埋め立てや山側の開発が進み、1982(昭和57)年には1,540名もの在校生を抱える滋賀県有数の大規模校となり、現在でも全38学級を持つ大津市内で2番目に児童数の多い小学校です。1973(昭和48)年に建てられた校舎は2015(平成27)年に大規改修工事を行い、美しく生まれ変わりました。

創立140年を記念して撮影された航空写真
創立140年を記念して撮影された航空写真

――学習の特色や教育目標について教えてください。

小林校長先生:本校は1993(平成5)年に市のコンピューター研究指定校に選ばれ、「平野小学校=コンピューター」と言われるほどコンピュータ学習をいち早く取り入れてきました。現在は「メディアルーム」と呼ばれるコンピューター室でコンピュータ学習を行っています。プログラム学習もこの教育の1つで、コンピュータ上でキャラクターを選び、動きの指示(プログラム)を組み込むことで、キャラクターを実際に動かす学習をしています。プログラミングを学ぶのではなく、順番や段取りを踏みながら物事を進めるという論理的思考を育てるための大切な教育です。そして、コンピュータから得た情報をグループの中でディスカッションするなど、これからの社会で必要な力を育てるためにコンピューター学習を活用しています。

コンピュータ学習の様子
コンピュータ学習の様子

――人権やいじめに対する取り組みにも力を入れているとお聞きしました。取り組み内容について教えてください。

小林校長先生:本校では子どもたちによる委員会がいくつかあり、その中にいじめや人権に対する取り組みを行う「にこにこ委員会」があります。いじめ防止啓発月間に当たる6月と10月には「にこにこ委員会」の主導のもと、命の大切さを全校生徒に伝える約1時間の集会を行います。今年は、「いじめとはどういうことか。」をテーマに、「にこにこ委員会」のメンバーが劇を通して表現してくれました。
また、いじめ防止の取り組みとして、本校のいじめ防止キャラクター「くじゃの」がイラストされたバッチを「にこにこ委員会」から1年生にプレゼントしました。「くじゃの」は2013(平成25)年に子どもたちが当時本校で飼っていた孔雀をイラスト化したもので、毎年1年生にはこのバッチをプレゼントしています。

「平野小学校」のオリジナルキャラクター「くじゃの」のバッチでいじめ防止を促進
「平野小学校」のオリジナルキャラクター「くじゃの」のバッチでいじめ防止を促進

小林校長先生:もう1つ特徴的な取り組みとしては、本校の宝である青い目の人形「ジェーン・ハイランド」に関する取り組みです。現在、ジェーンは大津市の歴史博物館に保管されているのですが、毎年秋になると本校に里帰りします。
ジェーンを始めとする青い目の人形は戦前、日米友好のためにアメリカから全国各地の学校にたくさん送られたそうです。しかし、第2次世界大戦が起き、敵国の人形だということでその大半は燃やされてしまいました。しかし、人形自体には何の罪もないと、密かに隠したり、保管した先生がいたようで、本校でも家庭科室の壁の裏に隠されていて、戦後改修しようと壁を外したところ、このジェーンが出てきたそうです。ジェーンにまつわる話とともに戦争の悲惨さ、ジェーンを守ろうとした先生の想いを子どもたちに伝えることで、改めて命の大切さを学ぶ機会にしています。

青い目の人形「ジェーン・ハイランド」
青い目の人形「ジェーン・ハイランド」

――地域との交流について教えてください。

小林校長先生:本校では地域の方との交流をとても大切にしています。ゲストティーチャーとして地域の方に来ていただき、昔の遊びや野菜の栽培方法、防災への取り組みなどを子どもたちに伝えていただいています。リアルな話に子どもたちも熱心に耳を傾け、質問もよく飛び交います。地域の方以外にも企業の方に来ていただくなど、さまざまな交流を行っているのも本校の特徴ですね。

JAFによる1年生の交通安全教室
JAFによる1年生の交通安全教室

――近隣の小学校や中学校、幼稚園や保育園との交流について教えてください。

小林校長先生:「中央小学校」、「逢坂小学校」、そして進学先にあたる「打出中学校」と本校を合わせた4校の生徒会、もしくはそれに代わる組織(本校では「にこにこ委員会」)の子どもたちによる「打出サミット」と呼ばれる会議が年に数回行われます。学校の取り組みや地域での情報発信方法などを相談し、時には子どもたちのグループの中に地域の方々が参加して会議を進めていきます。
昨年の「打出サミット」では各学校で決めた「いじめ防止のスローガン」を表現したCMをそれぞれの学校で作り、各学校の学内放送で流しました。子どもたちが率先して行うことで達成感が得られ、また次の活動へ意欲をもって取り組むことができるのもこのサミットの良いところです。

「打出サミット」から生まれた「いじめ防止のスローガン」を表したポスター
「打出サミット」から生まれた「いじめ防止のスローガン」を表したポスター

小林校長先生:幼稚園・保育園との交流としては、次の1年生として入ってくる年長の園児たちと本校の5年生との「55(ゴーゴー)交流」という交流の機会を増やして、園児の入学する際の不安を取り除く取り組みを行っています。例えば、年長の園児たちに小学校に来ていただき、5年生が手を引いて校内を案内したり。5年生にとっても、園児とふれ合うことで人と関わる愛おしさを培ってほしいという狙いもあります。また、1年生と年長の園児とが一緒になって、折り紙や塗り絵などのものづくりを行う交流なども行っています。

――今後、小林先生が進めたい教育方針について教えてください。

小林校長先生:本校の教育目標である「考える子ども がんばる子ども やさしい子ども 元気な子ども」の頭文字をとった「かがやけ」に向けた教育を進めることは大前提として、今年は「目と耳と心で聞いて、頭で考えて行動に移そう」というスローガンを子どもたちに伝えています。耳で聞くだけではなく、話している相手をしっかり見て、何を伝えたいのかを心で感じ取り、自分なりに考えて行動につなげていこうという取り組みです。これは教員にとっても大切なことで、子どもの思いをしっかり受け止めたいという思いでもあります。

子どもたちへの思いを語る小林先生
子どもたちへの思いを語る小林先生

――「平野小学校」での生活を通して、子どもたちにどのように育ってほしいとお考えですか。

小林校長先生:これからの時代は、日本にいながらも海外のいろんな国の人とつながる機会が増えてくると思うので、その時に国の違いや言葉の違いでシャットアウトするのではなく、自分から扉を開いて関わっていけるような力を身につけてほしいと思っています。そのためには身近にいる人とのコミュニケーションがとても大切です。だからこそ、障害のある子どもたちも含めて、子どもたちが多くの人たちとどのように関わり、自分に何ができるのかということを考えられるようになってもらえたらと思っています。そして、将来的にもし平野地区から出ることがあっても、いつかはまたここに戻ってきてほしいというのが地域の願いでもありますし、私の願いでもあります。

――今後、どういう学校にしていきたいとお考えでしょうか。

小林校長先生:学校という閉ざされた空間の中だけで学ぶだけではなく、より地域に出て行って、地域のことについて学び、地域の人と関わり、「この地域に対して自分に何かできることはないだろうか。」と考えることはとても大事だと思っています。その1つの方策として、大津市が進めている「コミュニティ・スクール」という取り組みを来年度からスタートできるように進めていきたいと思っています。「コミュニティ・スクール」とは学校運営を地域の方々にも積極的に関わっていただくという仕組みで、地域や保護者の方の意見を取り入れ、連携して子どもたちの将来を考えた学校運営を進めていきたいと考えています。

3年生以上の代表委員会の様子
3年生以上の代表委員会の様子

――最後に、 小林先生にとってこの街の魅力について教えてください。

小林校長先生:本校の学区には松尾芭蕉の墓がある「義仲寺」や「けまり祭」が行われる「平野神社」など、歴史を感じられる名所がたくさんあるだけでなく、山手から見た「琵琶湖」の眺望など、自然と歴史と街が調和した素晴らしい地域です。交通の便もいいですし、改めて子どもたちが育つ環境には申し分のない環境と言えるでしょう。

平野小学校の外観
平野小学校の外観

大津市平野小学校

校長 小林 典也先生
所在地:滋賀県大津市馬場1-2-1
TEL:077-522-2335
URL:http://www.otsu.ed.jp/hirano/
※この情報は2018(平成30)年8月時点のものです。